組織を変える“常識”―適応モデルで診断する (中公新書)

組織を変える“常識”―適応モデルで診断する (中公新書)
序盤は非常に退屈で、気味の悪い挿絵がさらにそのありきたりの雰囲気を助長しています。
ところが"第4章 組織の分類"から盛り上がりを見せます。組織には、前進するのを後ろから引っ張る「未練」のハードルと、前進するのを前から引っ張る「臆病」のハードルの2つが存在すると論じます。その組合せで以下の4通りに分類し、以降この分類をもとに、どの組織が良いかという議論に持ち込みます。

タイプ第1ハードル第2ハードル
鈍重型未練臆病
慎重型淡白臆病
性急型未練大胆
試行型淡白大胆
一概に鈍重型や性急型が悪いとはいえず、例えば鈍重型は早とちりが許されない警察などに向いていますし、性急型は原発のようにウッカリミスが許されない組織に向いています。
結局どのタイプの組織も一長一短あり、単純にどれが良いとは言えないのです。
しかし本書の優れている点は、ここで思考停止せずに一つの結論を導いているところにあります。現代のバラエティに富み、変化のスピードが極めて速い世界においては、第1のハードルは高く(未練)、第2のハードルは低い(大胆)方がよいと結論づけます。